今年4月、国内の空き家数が900万戸・過去最多になったという衝撃的なニュースが流れました。総務省が5年ごとに実施している「住宅・土地統計調査」の速報推計値にて、空き家数が2018年の前回調査から51万戸も増加したというのです。空き家の増加は賃貸経営者にとっても見過ごせない問題、最新事情を確認しておきましょう。
空家特措法改正で「管理不全空き家」新設
まず空き家問題で押さえておくべきは、増え続ける空き家への対策として国が制定した「空家特措法(空家等対策の推進に関する特別措置法)」の存在でしょう。放置すれば倒壊等のおそれがある危険な空き家=特定空き家への対処等が示されている法律ですが、行政による踏み込んだ対応を可能とするべく、2023年12月には改正空家特措法が施行されました。
この改正による大きな変更点のひとつが、「管理不全空き家」という空き家区分の新設です。管理不全空き家とは“このままだと特定空き家になりかねない空き家”のことで、建物の一部が破損している、雑草や植木が管理されていない、敷地内にゴミなどが散乱している等の状態が放置された空き家が指定されます。
管理不全空き家に指定され、行政の指導・勧告によっても改善が見られない場合には、「住宅用地特例」による固定資産税の減額措置も解除に。金銭面のペナルティを設けることで空き家の適正な管理を促し、特定空き家の発生を予防しようという動きです。
活用促すための規制緩和や報酬規定変更
空き家が増える背景には、立地や建物の状態の悪さに起因した利活用の難しさ、取引発生頻度の低さが挙げられます。そこで改正空家特措法では、自治体が「空家等活用促進地域」を設定し、建替えの規制緩和や用途変更の特例許可を出せる制度を創設。これにより、自治体が建物や土地の再生を促せるようになりました。
また宅建業法においても、7月から空き家取引の活性化を目的に報酬規程が変更されています。仲介手数料など不動産会社の報酬は、取引金額に一定割合を乗じて算出する「上限」があるため、価格が安い物件は報酬も低くなる仕組みとなっています。条件の悪い空き家は販売に手間がかかるにもかかわらず、価格の安さから手数料報酬も低くなるため、不動産会社が積極的に扱いたがらないというのが現状です。
この課題に対して国交省は、2018年に「低廉(400万円以下)な空家等の報酬額の特例」を設け、更に今回の変更で800万円以下の空き家取引の報酬上限を30万円へと引き上げ。報酬額アップにより不動産会社の意欲を高め、空き家市場の活性化を目指しています。
相続登記の義務化で責任の所在を明確化
さらに、所有者不明の空き家を減らすべく、今年の4月からは相続した不動産の登記が義務化されています。3年という期限内に登記をしないと10万円以下の過料が課される可能性があるほか、義務化の効力は過去の相続の登記未了不動産にまで広く及びます。
登記未了のうえ共有相続となっている空き家は、管理も再生も売却も難しく、いずれ特定空き家となって除却される可能性が高まります。実際、令和6年5月に代執行で除却された大阪府堺市の空き家は、登記上の所有者が亡くなっているうえ、数十人と見込まれる相続人がおり、相続人全員の合意形成が困難であることから適正な利活用が叶いませんでした。
放置された空き家は、犯罪の温床や災害時の障害となるなど、個人の経済面だけでなく周辺地域にもデメリットをもたらします。空き家の所有・相続の予定がある場合には、運用・再生はもちろん、税制優遇を受けられる「低未利用土地の特例」を用いての売却、「相続土地国庫帰属制度」を利用した国庫返還など、新しく制度化されたものを含めた最善策を検討しましょう。