新型コロナウイルスの影響で世界中が混乱した2020年も、残すところ1ヶ月。年が明ければ、さっそく「確定申告」の季節がやってきます。春先は業界のハイシーズンとも重なるうえ、申告期間中は税務署も大忙し。直前になって慌てないよう今から準備を進めましょう。
必要経費を総ざらいして損しない確定申告を
2020年分の申告期間は、例年通り2021年2月16日(火)から3月15日(月)まで。賃貸経営者はその期間内に、不動産投資で得た1年間(1~12月)の「不動産所得」を計算し、国に申告しなければなりません。
所得とは収入から経費を差し引いたもので、この金額によって所得税や住民税の税額が決まります。そのため「経費」に計上漏れがあると、それだけ課税所得も増えることとなり、税金を払い過ぎることに。改めて何が必要経費になるのかを総ざらいし、払い損のない、正しく賢い申告を心掛けたいものです。
必要経費にはどんなものが当てはまる?
不動産投資における必要経費とは、家賃収入を得るために直接的、または間接的に支払ったコストを指します。例えば、賃貸管理会社に支払う「管理委託料」や、入居付けに必要な「仲介手数料」「広告宣伝費」などはわかりやすいでしょう。ほかにも、必要経費には以下のような出費も当てはまります。
●ローンの金利・保証料… 金融機関から借り入れを行なっている場合、金利とローン保証料は経費扱いとなります。ただし、経費にできるのは原則として建物部分(設備含む)の金利に限られ、土地部分の金利は経費となりません。
●保険料… 物件の火災保険や地震保険、孤独死保険などの保険料は経費になります。
●管理費・修繕積立金… 分譲マンションの一室を貸し出している場合は、建物管理会社に支払う管理費や繕積立金も経費です。
●税金… 不動産投資によって発生する固定資産税や不動産取得税、印紙税などの税金(租税公課)も経費として計上可能です。
●修繕費… 建物や設備の修繕、退去リフォーム代など、建物の維持管理費や修理費用は必要経費に当たります。また、工事内容を問わず、一回が20万円未満の工事費用は修繕費として計上可能です。
ただし、外壁をモルタル吹付からタイル貼りに変更するなど、物件価値を高める工事の場合には修繕費ではなく「資本的支出」となり、耐用年数に合わせた減価償却の扱いとなります。一括計上できませんのでご注意ください。
●減価償却費… 建物や設備の取得費はそれぞれの耐用年数で減価償却し、経費に算入します。償却費は国税庁の「減価償却資産の償却率表」にて定められた償却率と取得価額から算出します。
そのほか、不動産投資に関する費用であれば、新聞代や書籍代などの「情報収集・勉強代」、不動産会社や現地訪問などに要する「旅費・交通費」、電話・メールなどの「通信費」、司法書士や税理士などへの「報酬」といったコストも必要経費として計上できます。
過少申告にはペナルティ。欲張り経費計上は禁物
このように必要経費として計上できるものが多くある一方、仕事用のスーツやバッグ、靴、腕時計など、身に付けるものは原則として経費になりません。なぜなら、こうした衣類や小物類は、仕事のみならずプライベートでも使用可能だからです。また、「情報収集・勉強代」は経費になると紹介しましたが、「資格取得費用」となると話は別。宅地建物取引士などの不動産関連の資格であっても、個人的なスキルアップが目的と見なされ対象外となります。
そのほか経費になるようでならないものもありますので、迷ったら担当の税理士や税務署に確認しましょう。また、経費外のものまで計上するなどして故意に申告内容を偽ると、その先には次のようなペナルティが待っています。
●過少申告加算税… 本来の税額より少ない額で申告した場合のペナルティ。納税すべき正しい税額との差額の10%(期限内申告税額と50万円のいずれか多い額を超える部分は15%)が追加で課されます。
●重加算税… 故意に経費を偽ったり収入を隠したりと、悪質な過少申告と判断される場合には、10%を大幅に超える「差額の35%」が加算されます。また、青色申告の特別控除取り消しや、刑事罰を問われる可能性もあります。
少しでもキャッシュフローを残そう・節税しようという気持ちは分かりますが、虚偽の申告で加算税を取られては本末転倒。罰則があることを心に留め、適正な申告ができるよう努めたいものです。
e-Taxでないと控除額減!可能ならばこの機に切り替えを
個人で行なうとなると複雑で手間のかかる確定申告。加えてトップシーズンの税務署は例年大行列と、ただでさえ重たい腰がより一層重くなります。
そこでお勧めなのが、国税電子申告・納税システム「e-Tax」。e-Taxを使えば、税務署まで行かなくとも自宅のPCからインターネット経由で確定申告が可能になります。国も利用を推進しており、今年からはなんと青色申告の65万円控除もe-Tax(または電子帳簿保存の活用)でなければ適用されなくなりました。窓口・郵送での申告は控除額55万円となり、その差額10万円。今後はe-Taxによる確定申告が主流となりそうです。
今年1月からはマイナンバーカードとスマートフォンアプリでe-Taxの利用が可能となり、確定申告もより簡単に。折しも新型コロナの影響で、窓口に行くのが躊躇われる今回の確定申告。未対応の方はe-Taxへの切り替え準備から始めてみてはいかがでしょう。