近年の物件価格や金利の上昇から、本来は自宅の購入を検討していたはずのファミリー層の賃貸ニーズが増えています。少子高齢化が深刻化する中、子育てしやすい環境づくりのための政策も動き出しており、子育て世帯向け物件への改修もしくは新築する際に補助金が使える「子育て支援型共同住宅推進事業」も2021年度からスタート。子どもたちの生き生きとした姿で物件を活性化するべく、今年度の同事業のポイントをご紹介しましょう。
補助範囲は柔軟だが集客の制限あり
同事業は、子どもが事故や犯罪から守られ、子育て期の親同士の交流機会も創出される、健やかな子育て環境の整備を目的に国土交通省が推進する支援事業です。活用にあたって満たすべき建物面の要件は「新耐震基準に適合している」「住戸部分の床面積が40平米以上」の2点のみ。これを満たす集合住宅・長屋であれば、賃貸アパートでも分譲マンションの一室でも補助の対象となります。
物件が“子育て支援”という目的で運用されることが前提のため、対象物件の現入居者は「特定子育て世帯(令和6年4月1日時点で小学生以下の子どもを養育している世帯)」に限られます。現況が空室の場合は最低3か月間、新規入居者を特定子育て世帯に限定して募集する必要があり、また少なくとも10年間は、空室となるたびに同様の募集をすることが求められます(分譲マンションの譲渡時も、相手は子育て世帯限定)。
このようにソフト面の条件が厳しい分、補助対象工事は幅広く、補助額も十分。例えば改修補助の場合、必須工事「⑥転落防止の手すり等の設置」さえ実施すれば、設備交換から間取り変更まで、左表のような大小さまざまな工事が対象となり、その工事費の1/3(上限100万円/戸・交流施設上限500万円)が支給されます。
新築工事・宅配ボックス設置も補助金の対象に
また、同事業は前述の通り新築も対象です。新築の場合は左表①~⑲のすべてを網羅したうえで、「居住者等による交流を促す施設」を少なくとも一つ設置することが求められます。要件を満たした場合の補助額は対象工事費の1/10(上限100万円×戸数+交流施設上限500万円)です。
ちなみに、今年の同事業の注目ポイントは、「宅配ボックスの設置のみ」も補助対象となった点です。建物要件等に加えて「子育て世帯(18歳未満を養育する世帯)の入居率3割以上」等の条件を別途クリアする必要がありますが、ニーズの高い宅配ボックスを補助金活用で設置でき、物件の全入居者にメリットを提供できる点は大きな魅力ではないでしょうか。
同事業は今年で3年目を迎え、要件も緩和されて使いやすくなっています。しかし来年も実施されるとは限らず、本年分は予算の上限に達し次第終了となります。子育て世帯の受け入れ検討、補助金の申し込みなどはお早めにどうぞ。