いよいよ春の引っ越しシーズンが開幕。満室で4月を迎えるためにも、できる対策は全て打っておきたいところです。しかし、空室を埋めることばかりに気を取られていると、思わぬ落とし穴に引っかかることも。堅実な経営を実現するためには”入居者の質”に対する意識と、”滞納トラブル”への備えが欠かせません。
悪質入居者のあっせん業者に注意
コロナ禍以降、入居者の住まいに対する意識の変化や、学生・外国人入居者の減少によって、これまで順調に集客できていたお部屋が入居付けに苦労するケースが増えています。そして、そんな賃貸経営者の焦りに付け込むように増えているのが、問題のある入居者をあっせんするビジネス。
特に都市部では、賃借人の勤務先等の偽証を手伝う「在席屋」「アリバイ会社」や、親族などの緊急連絡先の代わりに料金をとって番号を用意する「緊急連絡先代行」といったサービスも。
こうしたビジネスは以前から存在し、かつては裏で目立たぬよう人づて・紹介制などで運営されていましたが、近年はWEBサイト等で堂々と集客をするケースが増加。後ろ暗いサービスであるにもかかわらず、スマートフォン等から簡単にアクセスできるため、軽い気持ちで利用を検討する入居者も増えているようです。
保証会社や管理会社の入居審査をかいくぐるべく、こうした業者はあの手この手で貸し手側を欺きにかかります。入居者の質を維持するためにも、日頃から管理会社と入居条件をすり合わせておく、信頼できる仲介会社を選ぶなど、協力体制を構築しておくことが重要です。
悪質滞納者の退去までには一年弱かかる
問題のある賃借人が入居してしまった場合、もっとも発生しやすいのが「滞納」のトラブルです。滞納賃料・訴訟費用・原状回復費用を合わせて百万円以上の損害が発生するケースも珍しくなく、ダメージを最小限に抑えるためには、家賃保証会社や滞納保証契約の活用が有効です。
しかし、どちらのリスクヘッジを採用するにせよ、悪質滞納者を退去させるには最低でも8~10ヶ月程度の時間が必要となります。実際に明け渡しを実現するステップは以下の通りです。
①滞納督促▶まずは電話・手紙・訪問等で未納家賃を支払うよう督促します。
②賃貸借契約の解除▶再三の督促にもかかわらず滞納が3ヶ月に達すると、民法上の「契約当事者間の信頼関係の破壊」が起こったと見なされるのが一般的です。内容証明郵便によって支払いの催告を行ない、期日までに支払いがない場合には契約が解除される旨を通達します。滞納者への最終通告です。
③建物明渡訴訟の提訴▶契約が解除されたにもかかわらず滞納者が退去しない場合には裁判となります。管轄の裁判所に建物の明け渡しと滞納賃料の支払いを請求する訴訟を提訴します。
④口頭弁論~勝訴判決~明渡請求▶実際に裁判が行なわれます。判決まで提訴から2ヶ月程度かかります。
⑤明渡の強制執行の申し立て▶明渡訴訟で勝訴しても、まずは任意での退去を促す必要があります。それでも滞納者が退去せず居座り続ける場合には、建物明渡の強制執行を求めて裁判所に申し立てをしなければなりません。
⑥強制執行▶裁判所から入居者に強制執行の日時が通知され、ついに強制退去となります。強制執行の申し立てから実際の執行まで、およそ2ヶ月です。
こうしたリスクは保証会社の利用等で低減できるとはいうものの、滞納だけでなく迷惑行為まで行なうような場合には、近隣のお部屋も解約リスクを抱えることになるため、強制執行までの1年弱にわたってフォローが必要になります。年に一度のかき入れ時なればこそ入居者の質に意識を傾け、慎重な判断で健全な物件運用を維持していきましょう。