毎年恒例、全国賃貸住宅新聞社の「人気設備ランキング」2023年度版が発表されました。全国の賃貸仲介・管理会社が「この設備があれば周辺相場より高くても決まる」「この設備がなければ入居が決まらない」という2つの視点から答えた設備トレンドをヒントに、満室経営を叶える戦略を練っていきましょう!

※掲載の情報は2023.10.16「全国賃貸住宅新聞」より抜粋

ますます高まる「ネット環境の整備」ニーズ

数ある人気設備の中で今年も存在感を示したのが、9年連続で「高くても決まる」の1位に輝いた「インターネット無料(順位①①④⑦)」、そして3年連続の上位ランクインを果たした「高速インターネット(③⑥⑩)」です。今や手間なく・安く利用できるインターネット環境は、入居者にとって最大の関心事。利用料が転嫁され、賃料が相場より高くなっても、「無料」という言葉の持つ集客力は絶大です。

一方で、インターネット無料物件の増加とともに広まりつつあるのが、「無料物件のインターネット=使い物にならない」という風評です。SNS等を通じて、一部物件のネットの遅さが拡散されるなどで、リモートワークをする人や、動画の視聴・ゲームを好む入居者の「速度」を重視する傾向が強まっています。

テレビよりもYouTubeやTikTokの視聴に時間を割くZ世代(概ね25歳以下の若い世代)を取り込むためには、各戸の回線速度の確保や戸別に高速回線を導入できる環境の整備、また、特定入居者による回線の過剰利用・独占が発生していないかの把握・監督も大切です。

治安面の不安から高まるセキュリティニーズ

近年、闇バイト強盗や特殊詐欺、外国人犯罪のニュースが多く報じられたことで、賃貸住宅にもセキュリティ設備を求める声が高まっています。物件の防犯力強化は内見時の訴求力アップだけでなく、既存入居者の安心感を高め、長期入居を後押しする効果も期待できるでしょう。

王道は「エントランスのオートロック(②②⑧⑨)」や「防犯カメラ(⑧)」。特にオートロックは、集客力に直結する一方で後からの導入が難しいため、新築計画時に最優先で検討したい設備です。防犯カメラは後付け可能なうえ、見た目の威圧感で犯罪抑止に役立ち、さらに入居者のマナー違反を牽制できるという隠れたメリットも。かつては高級品でしたが、Wi-Fi環境を使ったネットワークカメラなら数千~数万円のコストで設置可能です。

暮らしの自由度を高める“タイパ”設備

人々の生活を長く制限していたコロナ禍が明け、自由に時間を使いたい・不自由なく活動したい、というニーズが反動的に増えている点も見逃せません。

天気を気にせず洗濯物を干せる「浴室換気乾燥機(⑤⑦)」や「室内物干し(ランク外)」、ごみ出し時間に囚われない「24時間利用可能ごみ置き場(⑨⑧)」、配達があっても在宅せずに済む「宅配ボックス(④⑤⑦)」など、本来なら受けるべき行動の制限を回避できる便利設備は、“タイムパフォーマンス(時間対効果)”を重視するZ世代への訴求力も期待できます。

低価格化の進む設備で最新の暮らしニーズに対応

賃貸経営者として常に意識しておきたいのが、時代の変化に伴う「新しい暮らし方」へのニーズの兆しです。常に時代の最先端を維持するとなると主にコストが課題となりますが、技術の進歩に伴って商品の低価格化・多様化も進むもの。手頃な価格になったと判断できたものから導入し、周囲との差別化につなげたいものです。

例えば、IoT製品をスマートフォンやスマートスピーカーで一括管理し、快適な生活空間を実現する「スマートホーム化」。話題としては数年前からありましたが、昨今は冷蔵庫・掃除機・洗濯機などのIoT家電も普及し、それらをコントロールする機械やセンサーも廉価な商品が登場。実現のハードルはずいぶん下がりました。

また、指紋認証や顔認証で錠を開閉する「生体認証」の導入も、「スマートロック」との合わせ技で数万円にて実現できる時代に。玄関錠の開け閉めに鍵はもちろんスマホさえ要らない便利な生活を提供できます。

低価格帯の電気自動車(EV)が次々と登場するに伴い、ニーズの上昇・設置コストの低下が進む「EV充電器」にも注目です。今後さらに増加するEV利用者にとって、充電設備つきの駐車場は最優先の選択肢。EV普及率にあわせて導入を検討すべきでしょう。

なお、今年の「この設備がなければ入居が決まらない」ランキングでは、新設の「エアコン」が当然のように1位を獲得し、単身・ファミリー共に僅差で「TVモニター付きインターホン」「室内洗濯機置き場」が続きました。トレンドを追うだけでなく、これら3設備のような”基礎固め”の重要性も再確認したうえで、オンシーズンに向けた次の一手を考えていきましょう。