賃貸市場で言われる「繁忙期」とは、1月後半から4月上旬にかけて通常月よりも大幅に需要が増す時期を指します。郊外の物件や、繁閑が極端になりがちな、学生をターゲットにしている物件などは、この繁忙期中に入居を決めないと、一年間空いてしまうことになりかねません。この繁忙期を生かして入居を決める手立てを考えなくてはなりません。まずは物件がどのような状況におかれているか「現状分析」をする必要があります。

現状分析で問題点を探る

賃貸経営においては、人によってその目的が違いますが、一般的にはキャッシュフロー(手残り)が重要な判断となります。簡単に言えば「キャッシュフロー=儲け」ですが、この「儲け」が適正に得られていない原因を「キャッシュフローツリー」という損益計算から導き出していきます。「市場の賃料が上がらない」「空室が多い」「予想通りの賃料が取れない」「運営費が高い」「借入の返済額が多い」など問題点は様々あります。これらの数字を年次ベースに並べて、一つ一つ問題点を炙り出します。見極めのポイントは次の通りです。


グロス賃料

現在募集している賃料と市場賃料(ライバル物件の家賃)を比較します。空室は最大の問題ですが、満室だから必ず良いということではありません。インフレの状況下では、地域的に潜在的に賃料が上がっているケースがあります。つまり、本来の賃料より安くしてしまっているため、機会損失を起こしている可能性もあります。まずは募集賃料が適正なのか、しっかりと見極める必要があるのです。


空室損失

何が問題で空室になっているのか要因を見極めます。例えば周辺にライバル物件が増えた、物件が老朽化している、賃料設定に問題がある、ニーズに合った設備や間取りか、広告は適正なのかなど、ポイントはすべて確認すべきです。

賃料差異

早期に決めるために、まず賃料を下げるという決断は悪いわけではありませんが、長期保有を前提に、一旦満室にする目的ならまだしも、先々売却を考えているようであれば、下げた賃料が資産価値の低下に直結することを考えるとこの方法はお勧めできません。

運営経費

固定資産税や修繕費のような必要経費を減額するわけにはいきません。宣伝広告費も削るのは厳しい。そこで目を向けやすいのは管理費の減額ですが、これも必ずしも良いとはいえません。賃貸管理はマンパワーがかかるので、当然にして人件費がかさみます。人件費を無理して削ることが得策かどうかは、判断次第となります。

ローン支払い

金利上昇が進む中、ファイナンスの見直しも大きなポイントです。金利や経費は上がる一方で、賃料収入が伸び悩んではキャッシュフロー改善されません。これらの損益計算の中から問題点を特定したら、一つ一つの改善方法を探っていきますが、ただ改善するのではなく、物件ごとに最適な方法での改善方法があることにも注意が必要です。