騒音を原因として解約を求めることは難しい

賃貸住宅における騒音には、さまざまなものが存在しています。例えば、毎晩深夜に大勢で宴会をしているような悪質なものもあれば、日常生活の範囲と言えるような生活音などもあります。その騒音が許容範囲内かどうかは、社会通念上、受忍すべき程度を超えているかどうかにかかっています。よって騒音を発生させている入居者がいて、隣室や上下階の入居者が迷惑を被っていたとしても、賃貸借契約や使用細則の義務違反を原因として、直ちに契約の解除を求めることは難しいと言えます。

明渡しを求めて認められるには、騒音の程度か酷く「その騒音のため、入居者のほとんどが退去した」とか「毎晩、深夜に窓を開けて、大音量の音楽を流し続けている」などといったかなり極端なケースや、何度注意をしても改善の余地がないなど、騒音被害の程度が客観的に著しい場合に限られるものとされています。

騒音トラブルは上下階での重量衝撃音から発生しやすい

ただ、このような悪質なケース以外でも、通常生活の中で人によっては音が許容できずに「騒音問題」と捉えられてしまうこともあります。その中でも、木造や軽量鉄骨造のアパートなどで、上下階での生活音が床に響いていることが焦点になります。

生活音は次の2種類に分けられます。

①軽量衝撃音
スプーンやコップ、おもちゃなど軽いものを床に落とした音。「カシャーン!」「コーン!」「カタカタ!」などの、軽い音。

②重量衝撃音
走ったり、飛び跳ねたり、大きなものや椅子や家具などを引きずる時に生じる音。「ドーン!」「ドンドン!」「バターン!」などの、重く響く中低音域の音。

共同住宅で問題になるのは、重量衝撃音がほとんどなのですが、こういった生活音は頻度や時間帯によって、受忍限度を超えて「騒音」となってしまう可能性があります。

騒音の事実を、客観的に捉える

日常生活を送るうえで生じる音は、共同住宅である以上、ある程度は許容しなければなりません。ただそのような生活音でも、人によっては過剰なほどに「騒音」と感じてしまうこともあります。

管理会社が騒音トラブルの対応をする場合には、まずは、騒音に対して怒りを感じている入居者の「感情」と、生じている騒音などの「事実」とを、客観的に受け入れる必要があります。「感情に理解を示す(共感する)」と同時に、「どの程度の騒音なのか」を騒音計で測るなどをし、事実を捉えることが重要です。

調査の結果、通常であれば許容されるような日中の生活音であり、限られた入居者だけが苦情を言っているようなケースでは、受忍すべきことを説明して対応することになります。逆に、受忍限度を超える騒音を出している事実が判明した場合には、騒音元の入居者に対して、騒音を出さないよう通達し、改善が見られないようであれば賃貸借契約書及び使用規約違反による退去を請求しなければなりません。それは、貸主は全ての借主(入居者)に対して、快適に使える居室を提供する義務を負っているためです。


人的トラブルの中でも全体の1/3程度にもなる騒音トラブル。建物自体をすぐに防音改善をすることは難しいので、入居時に「一般的な生活音に関することについては許容する」などの抑止をしておくことも、徹底しておきましょう。