春の引っ越しシーズンもいよいよ終盤戦。早々に決まったお部屋がある一方で、「ポータルサイトの検索条件はクリアしている」「内見もある」「なのに成約に至らない」という、“あと一歩”の物件に賃貸経営者が悩むタイミングでもあります。空室の原因を見極め、躊躇った時のひと押しとなる策で、満室の春を迎えましょう。

「条件面の緩和」で最後の追い込み

引っ越しシーズンの波に乗れる時間も残り少なくなったこの時期、まず検討したいのは「募集条件」へのテコ入れです。条件変更だけであれば即日からでも実施可能。反響獲得と成約の後押し、どちらにも効果を発揮します。

①「初期費用減額」で申込ハードルを下げる

入居を遠ざける原因のひとつが、高額になりがちな“初期費用”です。賃料設定が適切でも、周辺物件と比べて初期費用が高ければ、最後の最後で競り負けてしまうことも。敷金・礼金の減額フリーレントの付加は、こうした場面での競争力を強化し、反響獲得にも貢献します。敷金・礼金のないゼロゼロ物件も、保証会社やクリーニング費用特約でリスクを担保することで挑戦可能です。

②「制限緩和」で募集・成約の間口を広げる

この時期は新社会人や学生をターゲットとした募集が主流となりますが、あまり属性にこだわりすぎるとみすみす成約を逃すことに。早期の空室解消を目指すなら、制限を緩めて「外国人」「高齢者」といった範囲まで募集を広げるのも手。また、物件全体の入居条件や、都市計画法の制限などに問題がなければ、単身者用をルームシェア可に、居住用物件を事務所利用可に変更するなどの施策で、ポータルサイトからの反響増を狙う方法もあります。


設備で目を引く部屋・気が利く部屋に

条件面だけでなく、可能ならば設備面からも物件の訴求力アップを図りたいものです。空室要因が募集時の反響の少なさにある場合には、まずはポータルサイトでの検索項目と一致する設備の導入の検討を。ただし、時間制限があること・業者が原状回復で手一杯になる時期であることを考えると、「短納期・低コスト」のものが望ましいでしょう。

例えば、セキュリティ性が高まるTVモニタ付きインターホンや、若年層には当たり前となっている温水洗浄便座。もう少しコストをかけられるなら、1日工事で設置ができる浴室乾燥機エアコンなども集客強化に役立つ設備です。

セキュリティ性が高まるTVモニターホン

また、内見時の印象改善・成約率強化を図りたい場合には、前述のような設備だけでなく、検索項目に含まれない“地味な設備”を追加することも効果的。室内物干し備えつけ照明、コート掛け等の壁かけフックピクチャーレール姿見鏡など、実生活に役立つツールが充実した部屋は「気が利いている」と感じられ、内見者も新生活をイメージしやすいものです。

毎日使うトイレのペーパーホルダーも、そんな“気の利く地味設備”のひとつ。スマートフォンなどの小物が置ける天板つきや、シンプルモダンなデザインなど、ニーズに合った製品を選びましょう。


小物や家具で内見者にアピール

内見時はなんといっても第一印象が大切。そして第一印象は、ちょっとした工夫や気配りによって改善可能です。例えば、内見者を歓迎するウェルカムセットの設置。細かな寸法が分かる間取り図やメジャー、物件周辺が分かるタウンマップといった便利グッズ、内見を快適にするスリッパ、アロマ、寒さ対策の使い捨てカイロなどを用意したり、歓迎のメッセージボードやカードを置くのもいいでしょう。

また、部屋での暮らしを具体的にイメージしてもらうなら、実物の家具やインテリアを置くホームステージングが一番。最近の若年層が重視する「スペパ(スペースパフォーマンス:空間活用の効率・空間対効果)」を意識して、折り畳み式のソファベッドやバタフライテーブルなど、通常よりも空間を効率よく使える家具を設置すれば、部屋も広く見えて一石二鳥です。

ちなみに内見は部屋に入る前、「外観を見たとき」から始まっています。エントランスやゴミ置き場、駐輪場など共用部の清掃・整頓は抜かりなく行ない、清潔感を演出しましょう。


家賃減額・広告費増額は早めに決断を

なお、これらのアイデアと並行して検討せねばならないのが、家賃減額広告費(AD)増額です。オンシーズンの残り時間は少なく、ここを逃せば空室が長期化する可能性も高まります。2ヶ月、3ヶ月といった空室損を被るよりも、早期に空室を埋めるほうが結果的に収支をプラスにできる可能性もある以上、空室を埋める効果・即効性に優れた両施策の実施は常に前向きに考えておくべきでしょう。

その際、重要となるのが決断の速さです。なぜなら、周囲の物件所有者も同様に、賃料減額や広告費増額のタイミングを計っているからです。ライバルを出し抜くつもりが、迷っているうちに周囲と同時期、または後手に回った値下げとなってしまい、結局決まらない…、それこそが最も避けるべきシナリオです。

シーズン終盤でも打つべき手がまだあるからこそ、切り札を出すタイミングはシビアです。管理会社とよく相談しながら、満室までの“あと一歩”の距離を着実に埋めていきましょう。