ここ数年、急速に認知が広がっている「ホームステージング」。直訳すると「家を舞台のように演出する」といった意味ですが、要するに、空室に家具や小物を配置して空間演出する施策のことです。
あらかじめ家具類が設置されていると入居後の暮らしをイメージしやすくなるため、ポータルサイトからの反響獲得、そして内覧時の成約率の向上が期待できます。特に最近はインターネット普及による部屋探しの変化に加えて、コロナ禍における「非対面」の需要が発生したことで大きな注目を集めています。
スマホで部屋を探す時代に適した戦略
『30歳未満の学生・社会人の部屋探し徹底調査』(アットホーム社・2019年11月発表)によれば、不動産情報を探す手段は学生・社会人とも「スマートフォン(インターネット検索)」が第1位でした。今やWEB上でどれだけアピールできるかが、反響率・内覧発生率を大きく左右する時代です。
さらに、2020年度はコロナ禍によって店舗(または内覧)に行きたくても行けない人々が発生し、「最低限の内覧数で時間をかけず決めたい」というニーズが増大。インターネットを介した非対面での接客や内覧・契約が不動産会社の工夫によって実現した一方で、「内覧前にどれだけ情報を提供できるか」が申し込みを獲得するための重要なポイントとなりました。
その点、「ホームステージング」が施されたお部屋は、ポータルサイト等で目立ちやすくなるだけでなく、内覧の前から「入居後のリアルなイメージ」をターゲットに伝えやすくなります。また、実際の現地内覧時にも家具類をセッティングしておくことで、がらんとした冷たい印象ではなく温かな暮らしの印象が伝わり、前向きな検討を促せるようになるのです。
反響獲得から検討深化まで驚きの効果
一般社団法人日本ホームステージング協会の発表する『ホームステージング白書2019』では、ホームステージングの実施による内覧数、内覧時間、成約期間等へのプラスの効果が示されています。
【ホームステージング導入企業等へのアンケート】
問い合わせ数では全ての企業が増えたと回答し、内覧数も85%以上が増えたと回答するという驚きの効果の高さです。これは家具類の設置によって、WEB掲載の「映える」写真が目に留まり、物件が魅力的に見えたためでしょう。
また、内覧時間の増大は、お客様が入居後の生活をイメージし、有力候補物件としてじっくり検討されている結果と考えられます。契約までの期間についても85%以上が短くなったと回答しており、内覧の段階で「この部屋に住みたい!」という思いが生まれていることが予想されます。
このように大きな効果が期待できるホームステージングですが、大量の家具類を選定・購入して運用するとなると、なかなか一歩を踏み出せない賃貸経営者も多いことでしょう。
しかし、一度に多くの家具や小物を揃える必要はありません。大事なのはお部屋探しをされるお客様の目に留まり、快適で過ごしやすいお部屋であることをきちんと伝えることです。それは決して家具の量や値段に比例するものではありません。
また最近では、安価な「家具レンタル」や「レンタル家具で写真撮影のみ」といったサービスも増えています。センスや在庫の問題は専門家にお任せし、気軽に1部屋だけ導入してみるのもひとつでしょう。家具類を購入する場合は、入居者への販売やプレゼントも視野に計画するのもお勧めです。