昨夏は広い範囲で記録的豪雨が相次ぎ、日本各地で「観測史上最高」が更新されました。報道でも豪雨への警戒が盛んに叫ばれる中、よく耳にするようになったのが「線状降水帯」という言葉です。

線状降水帯とは、発達した雨雲が線状に連なった積乱雲群のことで、大雨が局地的に降るゲリラ豪雨と異なり、広い地域に何時間にもわたって大量の雨を降らせます。当然、土砂災害や河川氾濫などのリスクも急激に高まるため、山沿いや川沿いのエリアは特に注意が必要です。

例年、線状降水帯の多発時期は梅雨の終盤。本格的な雨のシーズンに入る前に、現状把握の方法と対策を確認しましょう。

事前の点検で大雨被害の原因となる箇所をチェック

雨対策でまず気をつけたいのは、建物と敷地の防水・排水機能です。被害が想定される箇所ごとに、チェックすべき被害の原因およびその対策をまとめました。

屋根・屋上・外壁

真っ先に確認しておきたいのが、風雨に直接さらされる屋根・屋上・外壁です。ひび割れなどの破損がないか、防水塗装は劣化していないかなど目視点検を行ない、必要に応じて修繕をしましょう。ただし、高所の確認は危険を伴うため無理は禁物。出入りの容易な構造でない限り、屋根などは専門業者の調査を検討しましょう。

雨樋・排水溝

いざ大雨となったとき、雨樋や排水溝が枯れ葉などのゴミで詰まっていると適切に排水されず、浸水被害の原因になりかねません。雨の日に雨樋から水があふれていたり、敷地の排水溝まわりに水が溜まっていたりしたら要注意。シーズン前にしっかり清掃しておきましょう。

駐車場

車を地下に収納するピット式や、駐車場の立地が雨水の流れ込みやすい位置にある場合も注意が必要です。排水ポンプの点検・交換や土嚢の備蓄のほか、万一の際には入居者に車の避難を案内するなどの対策が必要です。

エレベーター等の機械設備・電気設備

物件の機械・照明設備も重点チェックポイント。横殴りの雨がエレベーターやオートロック、照明機器の非防水部分に吹きつけると、隙間からの浸水で電気回路がショートし、故障や共用部の停電を招く恐れもあります。もし共用ブレーカーが落ちてしまうと、室内のテレビや無料インターネットも使えなくなり、入居者からクレームが殺到する事態に。設備の劣化状況を見直したうえで、雨が入り込みそうな場所には何らかの対策を講じましょう。

被災時の復旧は安全に配慮しつつ迅速に

あまり想像したくはありませんが、万一、床下・床上浸水が起きてしまうと、復旧には相当の手間と時間がかかります。大まかな復旧の手順は次の通りです。

大雨被害の原因と対策

床上浸水後の復旧手順

  1. 水抜き(排水ポンプ、バケツ)
  2. 泥土・浸水ゴミ・浸水家具の撤去
  3. 建物の洗浄、殺菌消毒
  4. カビ・腐れ・シロアリ予防処理
  5. 消臭処理・建物乾燥

被害を最小限に抑えるには、兎にも角にも速やかな排水・乾燥・消毒が欠かせません。専門業者を手配できると確実ですが、周辺一帯が被災した場合には業者の確保も難しく、ご自身や入居者の手で初期対応を始めるケースもあるはずです。その際、気を付けたいのは「清掃用の服装に身を固める」「清掃中に負ったケガはすぐに消毒する」ことの徹底。浸水時の水は、下水・汚泥・生活排水などが混じっているため非常に不衛生であり、破傷風等の感染症対策が欠かせないのです。

また、復旧対応と併せて入居者の安全確保も大切です。入居者加入の保険を案内しつつ、行政の避難所を案内したり、他の空室やホテルなどの宿泊施設を紹介したりと、管理会社と協力して入居者の生活を一時的にでもサポートできるといいでしょう。

今年10月に火災保険料再値上げ。事前に見直しも検討を

とはいえ、自然災害の前では個々の対策にも限界があります。被災した際に納得のいく補償を受けるには、火災保険の定期的な見直しが大切です。

近年は自然災害の甚大化・頻発化で保険料の改定が続いており、今年10月にも値上げが予定されています。最長契約期間も10年から5年へと短縮されるため、改定後すぐに更新を迎える方は、更新前に10年の長期で契約し直したほうがお得かもしれません。また、そもそも水害が起こりやすいエリアであるのに水災特約がないケースは危険信号。ハザードマップでリスクの大小を確認しましょう。

今年の豪雨シーズンはまさにこれから。この機会に早めの雨対策を整えておきましょう。