2021年の大きな出来事のひとつといえば、5月に成立した「デジタル改革関連法」。成立に伴い内閣府内にはデジタル庁が新設されたほか、各種行政手続きや法令におけるアナログな制限についてもさまざまなデジタル改革が行なわれています。 そしてその改変は、間もなくやってくる「確定申告」にも例外なく及んでいます。デジタル化の影響を確認しましょう。
国策としてe-Tax奨励。会計上のメリットも
確定申告に関わるデジタル化の代表は、なんといってもインターネット経由で手続きができる国税電子申告・納税システム「e-Tax」でしょう。すでに2020年分からは、「e-Taxで申告しないと損!」とも言えるような改正も行なわれ、また、手元のスマートフォンから電子申告ができる仕組みも整備されるなど、大々的なデジタル化推進が行なわれています。
e-Taxによる申告に必要となるのは、基本的に[パソコン] [インターネット環境] [マイナンバーカード][ICカードリーダー]の4点だけ。マイナンバーカードの発行には多少の時間がかかりますが、準備さえ整えられれば誰でもe-Taxのメリットを享受できます。
e-Taxを利用するメリット
1.自宅で確定申告
税務署まで行く時間、長蛇の列に並ぶ時間を節約できます。
2.添付書類を省略可
給与の源泉徴収票や保険料控除の証明書、医療費控除の領収書など、書面申告では添付が必要な書類の提出がe-Taxでは省略できます。
3.還付がスピーディー
書面申告では1ヶ月以上かかる税金還付が、e-Taxなら3週間程度で受けられます。
4.青色申告者は控除額が10万円増
不動産経営が事業的規模(5棟10室以上)の方は青色申告をされているケースが多いと思いますが、e-Taxで青色申告を行なうと控除額の最高額を10万円増やすことができます。2019年までは最高38万円の基礎控除と最高65万円の青色申告特別控除による計103万円の控除が最大値でしたが、2020年分から制度が改正され、最高48万円の基礎控除と最高65万円の“e-Tax限定”青色申告特別控除による計113万円の控除が最大値に。書面の申告でも改正前と変わらず103万円までは控除できますが、e-Taxでの申告より控除10万円分の損、とも言えます。
ちなみに今回の確定申告では、従来通りの書面申告でもデジタル化の波を実感できる場所があります。それは、書面からなくなった押印欄。「脱ハンコ」は行政のデジタル化加速の象徴ですね。
電子取引の領収書データ等の保存も義務化に
さらに、2022年1月1日から施行される「電子帳簿保存法」の改正では、インターネットショッピングなど「電子取引」でデータ受領した領収書等のデータ保存が義務化されます。これまでは紙に印刷して保存でよかったものが、データで受領した領収書等はPDFファイルなどのデータ形式で、かつデータ改ざん等が行なわれない環境で保存することが必須となりますので要注意です。
Amazonや楽天市場などでの買い物も「電子取引」ですし、クレジットカードの明細がオンラインの場合は「データ受領」です。身近な取引であっても、2023年2月の確定申告に向けてさっそく1月から対応する必要があります。紙で受領した領収書等は紙のままの保存が許されますが、更なるデジタル対応が求められていることは押さえておきましょう。
時代の変遷に伴う必然とはいえ、今後はデジタルの波が怒涛のように押し寄せます。最初は「特別なこと」「難しいこと」と感じるかもしれませんが、世間に取り残されないためにも、e-Taxへの挑戦などから少しずつ変化を受け入れていきましょう。
ところで、今年の申告の「特別なこと」といえば、コロナ禍に伴う給付金や助成金の申告。持続化給付金や休業要請協力金等の給付金は、一部を除いて原則「課税対象」です。収入として計上する必要がありますので、申告漏れにはご注意ください。