離婚経験者同士の結婚も珍しいものでなくなった昨今の世情を映してか、2021年10月に行なわれた宅地建物取引士試験では、少し事情の込み入った「ワケあり相続」の問題が出題されたので、一緒に考えてみましょう。

Q問題

Aには死亡した夫Bとの間に子Cがおり、Dには離婚した前妻Eとの間に子F及び子Gがいる。Fの親権はEが有し、Gの親権はDが有している。AとDが婚姻した後にDが令和3年7月1日に死亡した場合における法定相続分は、民法の規定によればどうなるか。

※実際に出題された問題(一部改変)

A解説と回答

問題文になるとややこしく感じますが、離婚が関係する相続のポイントは3つです。

  • 配偶者は離婚した時点で相続人でなくなる
  • 配偶者の連れ子は相続人にならない
  • 離婚時に親権を手放しても実子は相続人(親権は関係ない)

まず、前妻Eは離婚した時点で相続人から外れます。また、妻Aの連れ子であるCも相続には無関係。残った妻Aは当然に相続人として、悩むのはEと親権を分けた実子FとG。ですが、「相続に親権は関係ない」ので、FとGは2人とも相続人となります。よって、相続人はA・F・Gの3人、法定相続分は妻が半分、残りの半分を子らで等分ということで、Aが2分の1、Fが4分の1、Gが4分の1、となるわけです。

受験者からは「昼ドラ」の声。避けたい相続の泥沼化

さて、ここで想像しておきたいのは、この相関図の生み出す昼ドラのような実際の相続の現場です。たとえば、F・Gへの相続。本人Dは「実の子に財産を渡す」ことに抵抗感も薄いかもしれませんが、実際の遺産分割協議は本人の死後、自分のいない場で行なわれることになります。

ましてや、Fが未成年の場合には、相続には親権者たる前妻Eの同意が必要。元妻と現妻が、自分や子の受け取る財産をめぐって冷静に話し合えるかどうか…。遺言をはじめとした生前対策の重要性を改めて認識させられる問題、くれぐれも相続の準備はお早めに。