秋のオンシーズンが間もなくやってきます。この時期は全国で転勤・転居に伴う引っ越しが増えるほか、9~10月入学の外国人留学生もこぞって来日する季節。「守り」と「攻め」を意識した空室対策で早期成約と安定経営の実現を目指しましょう。

秋は不安を解消する「守り」の施策を優先で

空室対策はその目的によって大きく2つに分けられます。ひとつは、入居付けの足を引っ張る問題点を解消し、物件が十分に魅力を発揮できる状態にするための対策。もうひとつは、物件に付加価値が生まれるよう建物や設備をグレードアップし、競合物件との差別化を図るための対策です。いわば、空室対策の「守り」と「攻め」。そして、秋の募集に向けて優先したいのは、マイナスポイントを解消する「守り」の空室対策です。

共用部、春夏の課題改善で第一印象良く

マイナスポイントの解消にあたり、まずチェックしたいのは物件を外から見たときの第一印象です。なぜなら内見者は、物件が視界に入った瞬間から住みたい・住みたくないの判断を始めており、しかもその判断の影響は「第一印象の良し悪しで入居が決まる」と主張する仲介担当者もいるほど大きいからです。

特に夏は、アプローチや駐車場に雑草が生い茂ったり、新生活に慣れてきた春の入居者が駐輪場やごみ置き場を乱したり…と、物件の印象を損なうポイントが散見されるようになるタイミングでもあります。早めの対策で共用部の不安要素を解消しましょう。


室内はこまめな清掃と必須設備でモレなく

原状回復工事が行なわれるため、専有部では共用部のようなマイナスポイントは原則発生しません。しかし、居室内は内見の本番、ちょっとした欠点が成約の意思に影響する気の抜けない部分です。

対策としては、室内のこまめな清掃のほか、夏場は排水口の封水が蒸発しやすいため、下水臭や害虫が室内へと侵入しないよう防臭対策・防虫対策を徹底します。また、最近は照明やレースカーテンがあらかじめ設置された物件も増えました。入居者の節約になるだけでなく、悪天候時や夕方・夜間でも暗い部屋を見せずに済む、眺望に自信がなければそれを隠せる等、賃貸経営者にもメリットのあるマイナスポイント解消策です。

そしてもちろん、今やあって当然と言われる設備を揃え、物件を市場の常識に合わせることも大切です。「ないと決まらない設備」が未設置となれば、それだけで大きなマイナスです。


たとえ築浅や好立地の物件でも、内見者のガッカリするポイントがいくつもあっては成約は望めません。反対に、築年数や立地で多少不利でも、欠点のない物件は順当に入居が決まるものです。物件の弱点は費用をかけてでも丁寧に潰し、魅力の回復に努めましょう。


付加価値つくる「攻め」の施策で差別化を

マイナスポイントを一掃したなら、次は「攻め」の空室対策にも挑戦したいものです。コストはかかれども、その効果は期間の限られた中で入居者を獲得できる確率を高めるだけに留まりません。空室損の低減や家賃の底上げ、集客力の長期維持、果ては入居期間の長期化にも波及します。

共用部の安全性・デザイン性・機能性アップ

守りの対策は主に見た目の改善に注力しますが、攻めの対策では「便利さ」や「暮らしやすさ」といった部分も改善します。例えば、ゴミステーションの設置。デザイン性の高い製品を選べば、美観を改善しつつ「通行人にごみを見られない」「カラスに荒らされない」「24時間ごみを出せる」等の価値を持つごみ置き場を実現できます。また、植栽や建物を照らすエクステリア照明を導入すれば、おしゃれで暗がりの少ない、夜でも安心感のある物件に。近年の防犯意識の高まりに応えて防犯カメラを設置し、女性やファミリーへと訴求するのも有効です。

予算と工期の調整がつくなら、思い切ってエントランスをリノベーションするのも手です。壁紙やタイルの交換、蛍光灯からダウンライトへの変更といった部分的な改修でも第一印象は改善しますが、古い郵便受けの交換や宅配ボックスの設置までできると尚良しです。

ターゲット別の差別化施策や募集時のひと工夫も

室内で攻めの対策を打つ際は、設備の豪華さ等よりも、それがターゲットに刺さる施策かどうかを重視します。例えば、この時期に増える学生や社会人の在宅作業ニーズを狙うなら、間取りの一部にワークスペースを設けたり、折り畳み式の壁付きデスクを設置する等が考えられるでしょう。単身赴任や外国人留学生を狙うなら、テレビ・冷蔵庫・洗濯機等を揃えた“家具家電付き物件”へと改装する、外国人ウケを期待して温水洗浄便座を導入する、といった施策も検討できます。

また、より便利な暮らしを求める層に対しては、インターネット無料(または高速インターネット)や浴室換気乾燥機の導入も有効。スマートロックや生体認証キー、ホームセキュリティ等の導入で防犯性能をアピールするのも選択肢のひとつです。

そのほか、秋のオンシーズンで満室を狙うなら、募集時の工夫も忘れずに。敷金礼金ゼロやフリーレント等の条件変更、ホームステージングやバーチャルホームステージングといった反響獲得策など、できることは多くあります。ぜひ管理会社と相談し、タイミングを捉えた空室対策で秋の成約を勝ち取りましょう!